Expert Interviewエキスパートインタビュー
── 実現の見通し、今後の構想はどんなものでしょうか。
非常に答えにくいのですが、宇宙旅行機の開発にしても、宇宙港の構築にしても、現時点では、まだまだ見通せる状況にありません。実現に向けて必要なことを一つひとつ積み上げていっている状況です。
資金力があれば、大きく動かせるのですが、まだまだままならないのが現状です。ただ、資金が無いと言って何もやらないのではなく、出来ることはあるので、歩みは止めず進めていきます。もちろん、並行して資金調達にも動きます。
どんなことに対しても、見通しや可能性の有無を判断してやっていません。宇宙機を作る、宇宙旅行を実現するために、何が必要かを考えて、そこを原点にアクションを起こしています。
「自分が本当にやりたいことは何なのか?」を突き詰めて考えてください。できる、できないという「能力」の判断ではなく、“やりたいこと”つまり、「意思」で判断してください。
“本当に”やりたいのであれば、何があろうが頑張れるはずです。一度や二度失敗しても、大した話ではないです。ただ、本当に一生懸命、それこそ血反吐を吐くくらいの気持ちでやってください。情報を集め、人に会い、現場に行き、勉強や経験を積み、ありとあらゆることをして、実現に向けてトコトンがんばってください。
それでも、上手くいかないことは出てきます。上手くいかないことの方が多いです。でも、その時は、また他の手段や方法、視点を変えて、別のアプローチを探ってください。本当にやりたいのであれば、諦めてはダメです。
こうした考え方や発想を、学生のみなさんには持って頂きたいです。
── けれども、「もし失敗したら……」と思うと、なかなか動けないものだと思います。
誰だって失敗なんてしたくないし、失敗しないように努力するのですが、失敗したら、それはそれでしょうがないです。悩むぐらいなら、次の手を考えるべきです。
私も、ずっとパイロットや宇宙飛行士になりたいと思っていましたが、落ちてしまいました。その後は、ロケットや航空機を研究・開発している大企業や機関に入ろうとしましたが、これも落ちてしまいました。けれども今、そこで働いている人が私のところへ来て、一緒に研究開発をしています。
しかも彼らは、ここへ来て「すごいですね」「勉強になります」なんて言うんです。私から言わせれば、皆さんの方がすごいところにいるし、難しいことをやっていると思います。
大きな組織では、予算確保やビジネスの規模感、更には、これまでのしがらみなどで、思うようにものづくりができないこともある。その点、小さな会社は、動かせる規模は小さいけど、創意工夫でそれをカバーし、自由に行動できます。
何が正解かは、わかりません。うちの会社も、明日つぶれるかもしれない。開発も、いつ頓挫するかも分かりません。
でも、そんなことを考えても、仕方のないことです。そうなったらそうなった時に、また新しいことに向けて、ありとあらゆることをトコトンやって、がんばっていけばいいのです。諦めてはダメです。
── ありがとうございました。
Profile
緒川 修治(おがわ・しゅうじ)
幼い頃から父が自宅で行う実験や考案を手伝う。航空機メーカーにて新型航空機開発プロジェクトに参画。'07年5月 宇宙機開発ベンチャー、PDエアロスペースを起業。
独自技術のエンジンを搭載した完全再使用型弾道宇宙飛行機の開発をスタート。'13年、'14から内閣府宇宙戦略室宇宙政策委員会 宇宙輸送システム部会委員を務める。
Writer
鳥嶋 真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。
内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行なっている。著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。
Webサイト:http://kosmograd.info/
Twitter:@Kosmograd_Info