No.016 特集:宇宙ビジネス百花繚乱

No.016

特集:宇宙ビジネス百花繚乱

連載01

デジタル時代で世の中はどう変わるのか

Series Report

アップルはもはやファブレス半導体メーカー

ITサービスを行う企業の中で、自社製の半導体チップを最初に製造したのはアップル社である。初期のマックには、68系、PowerPC、Intelの86系など、外部から購入したCPUチップを搭載していた。しかし、iPhoneのようなモバイル機器には、既存のプロセッサは消費電力が大きすぎて向かなかった。電池がすぐに消耗してしまうからだ。このため、ARMからCPUコアを購入して改良し、さらにクロック速度を簡単に上げられるロジック回路を発明したイントリンジティ社を買収した。

今では、iPhoneのアプリケーションプロセッサの設計を自社でできるほど、アップル社は半導体設計の知識を身につけている。最近では、グラフィック回路も自社開発することを宣言し、これまでグラフィックス回路を担当してきたイマジネーションテクノロジーズ社と決別した。

アップル社の半導体へののめりこみはさらに激しさを増している。ダイアローグ社から購入していた電源用のICを自社開発に切り替え、イメージセンサーを設計してきたインビセイジ社を昨秋に買収した。インビセイジ社のイメージセンサーには、量子ドットと呼ばれる高感度のカメラを搭載できる。

ウーバー化に対処する

半導体業界でのウーバー化に対して、業界はどのように対処しようとしているのか。この答えの一つが自社をより強くする戦略であり、IBM社が示唆したように、独自のテクノロジーを磨くことである。これを象徴する出来事が、2015年から2016年に活発だったM&A(買収)だ。実は、昨今の活発なM&Aの背景には、実はウーバー化が潜んでいると考えられる。

「ウーバー化から自社を守るためにどうすべきか」と経営者に尋ねると、最も多い答えが「テクノロジー」であった(「IBM C-Suite Study『境界線の再定義』、2015年版」による)。つまり、自社の持つテクノロジーをより強くすべきということである。かつての経営者は財務や人材が重要と答えることが多かったが、近年はテクノロジーが重要だと多くの経営者が認識しているという。

経営者たちは、自社に大きな影響を与える外部要因は、「テクノロジー」に加え「市場の変化」だと考えている。しかし、自社のテクノロジーをさらに磨き、市場の変化にもすぐに対応することなど、もはや1社ではできない。だからこそ、エコシステムを形成し、自社の不得意な領域を、得意な他社に任せコラボしていく、という考えが必要になる。目指すのは、「提携先との関係を深め、隣接業界の企業と連携していく。そして一緒に顧客の声に耳を傾け、ソリューションを作り、イノベーションを実現する」ことである。

IBM社自身も、これからのテクノロジーとして、AIやコグニティブコンピューティング技術を磨いており、「ワトソン」と呼ばれるAIコンピュータでビジネスを行っている。ワトソンは、「人間の音声を聞き分ける」「意味を理解」「その意味に対応する答えを用意」「音声を合成して出力」という一連の音声認識作業を行う。「意味を理解」して「その意味に対応する答えを用意」することは、いずれも機械学習で習熟することができるものだ。ワトソンはIBM社が持つ将来に向けた重要なテクノロジーの一つであり、創薬開発にも利用され、すでに成果を挙げているという。

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