No.017 特集:量子コンピュータの実像を探る

No.017

特集:量子コンピュータの実像を探る

連載01

ネット革命第2波、ブロックチェーンの衝撃

Series Report

5段階で拡大する応用、仮想通貨からスマートコントラクトへ

ブロックチェーンは仮想通貨への応用で技術を磨き、利用環境を整えてきた。そして今、既存の商習慣や利用シーンごとの要件に合わせ、様々な改良を加えられながら、着実に応用を広げている。経済産業省は、報告書「平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)」の中で、ブロックチェーンの応用拡大は、5段階で進むとした(図4)。

[図4] 5段階で進むブロックチェーンの応用拡大
出典:経済産業省発行の報告書「平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)」を基に作成
5段階で進むブロックチェーンの応用拡大

第1段階は仮想通貨向け台帳としてのブロックチェーンの活用である。これは、すべての取引履歴をブロックチェーンに記録する方法での応用だ。これまで紹介してきたように、この段階での技術開発と利用実績はかなり進んできている。

第2段階はその他の仮想的価値の管理への活用である。ビットコインが備えている「中央管理者がいない」「トレーサビリティを確保できる」「取引での与信が迅速に進む」といった特徴を生かして、情報コンテンツやネットサービス、顧客サービスである買い物ポイントなどのやり取りへの応用が想定されている。

第3段階は取引の記録への活用である。これは、現実世界で行われる取引の記録を、ブロックチェーンの仕組みを使って、中央管理者なしで管理することを目指したものだ。不動産や自動車など資産の移転やコンサートチケットやクーポンなどサービスの利用権の転売などへの応用が想定される。

第4段階は権利の記録への活用である。取引時の記録だけでなく、所有や権利の真正性を保証する手段として、ブロックチェーンの記録を使う。遺言や履歴書、さらには公文書などの保管、投票などへの利用が想定されている。

第5段階は、将来発生する手続きや処理の記録への利用である。何らかの処理を行うプログラムをブロックチェーン上に書き込むことで、将来発生する手続きや処理を記録し、処理を自動化しようとするものだ。契約の自動執行(スマートコントラクト)、IoT 機器での自動処理などが検討されている。

プログラムをブロックチェーンに組み込んで契約を自動化

様々な用途への応用が期待されているブロックチェーンだが、ビットコイン向け技術そのままでは応用を広げることは困難だ。前回、ブロックチェーンには現在の社会の仕組みや商習慣に合わせて中央管理者が一定の権限を担う派生版*4や、合意形成の仕組みを変えて性能の低いコンピュータでも台帳を管理できるようにした派生版*5があることを紹介した。これらは応用を拡大する上で必要な改善を加えて登場したものだ。そして、さらに応用を広げるため、ブロックチェーンに残されていた様々な課題を解決するための技術開発が進められている。

ビットコイン向けブロックチェーンでは、ノード間でやり取りするデータの一部に自動処理を実行するためのスクリプト(処理命令の文字列)を記述できる機能がある。この機能は、第三者を介さずに自動契約するスマートコントラクトの実現に欠かせない。ところが、これまでは記述できる処理の内容に制限があった*6。例えば、一定の条件を満たすまで特定の処理を連続して行なう「ループ」処理を、1つのブロック内で行うことができない。これでは、応用の広がりが限定されてしまう。ただし、仮想通貨の一種である「Ethereum」向けや、ビットコイン向けを拡張した「Sidechain」「Counterparty」など、記述可能な処理の制限がない工夫を加えたブロックチェーンも既に登場している。例えば、Ethereumでは、自動契約するときに仮想通貨を採掘者に支払う仕組みで運用するスマートコントラクトが実現している。

[ 脚注 ]

*4
ビットコインに使われているような、第三者が取引や契約を仲立ちしないブロックチェーンを「パブリックチェーン」と呼ぶが、特定の団体や人が運用する「プライベートチェーン」や、複数の団体や人で管理する「コンソーシアムチェーン」などもある。こうした派生版の登場で、金融機関や政府も安心してブロックチェーンの応用を考えられるようになった。
*5
ビットコインの合意形成の仕組みとして採用されている仕事による証明「Proof of Work(PoW)」の他に、保有資産による証明「Proof of Stake(PoS)」や貢献による証明「Proof of Importance(PoI)」といった方法がある。
*6
利用可能なスクリプトを使って、どのような処理でもプログラムで記述できる状態のことを、「チューリング完全である」と表現する。しかし、ビットコイン向けブロックチェーンで利用できるスクリプトは、チューリング完全ではなかった。
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