No.018 特集:スマートコミュニティと支える技術

No.018

特集:スマートコミュニティと支える技術

連載01

半導体チップの再生可能エネルギーへの応用

Series Report

電流を流す、流さない、というスイッチングをさせると、やはりコイルに電荷(電流の素)が溜まったり吐き出されたりする。コンデンサにも電気を流すと電荷が溜まり、流さなければ溜まった電荷は留まるか、ゆっくり放電されていく。この性質を利用して、電流をオン・オフすることによって交流を作り出す。これがインバーターの原理だ。このオン・オフのスイッチング動作をするのがトランジスタなどのパワー半導体である。

風力発電のような大きな電力を必要とするインバーターでは、例えば1000V×1000Aだと1MW(100万ワット)にもなるため、パワー半導体が必要になる。もっと多くの電力が必要なら、このトランジスタを直列・並列に並べて増やすことも可能だ。もっともパワートランジスタでさえ、等価的に小さなトランジスタを直列・並列に並べたような等価回路で表現できる。

大電力のパワートランジスタを小さなマイコン(マイクロコントローラー)で動かすこともできる。ただし、入力電圧が低かったり、入力電流が小さかったりする場合には、パワートランジスタを駆動させることはできない。そんな場合に入力電圧や入力電流を増幅させるのが、「ドライバ」あるいは駆動トランジスタといわれる小さなパワートランジスタの役割だ。そして、その小さなパワートランジスタを駆動するのが、マイコンということになる。だから、インバーターを制御するためには、マイコンやドライブICやトランジスタ、そしてパワートランジスタが必要になるのだ。このようにして、大電力を動作・制御することができる。

さて、風力発電では、コンバーターで交流を直流に変換することで、風車の回転数のばらつきを除去している。さらに、インバーターによって直流を交流へ変換して、任意の電圧と周波数を持つ交流に変えているのだ。

インバーターに使われるパワートランジスタであるIGBTは、簡単に言えば、MOSトランジスタのドレイン側にP領域を追加して、バイポーラ(電子と正孔の2種類のキャリアを使うことからBi=二つ、Polar=極性)を動作させることで低抵抗・高耐圧のトランジスタを実現したものだ(図3)。入力端子のゲートに電圧を加えた時にだけ電流が流れるため、オンもオフもしやすい。前述したようにサイリスタは、大電流をオンしやすいがオフしづらく、回路が複雑になってしまうため、サイリスタからIGBTへのシフトが起きている。

[図3] IGBTの断面構造 MOSトランジスタはコレクタのp領域の代わりにN+層を入れた構造をしている
作成:津田建二
IGBTの断面構造

パワートランジスタでは、シリコンのIGBTに対して、新しい材料であるSiCやGaNを使おうという動きはあるが、風力発電では、50Hzや60Hzの電力を生み出すだけなので、SiCやGaNが使われることはほとんどない。IGBTはバイポーラ動作を利用するためスイッチングがMOSFETに比べ遅いが、50Hzや60Hzの周波数は電子的には十分遅いため、わざわざ高価なSiCやGaNのMOSFETを使う必要がないからだ。ただし、50/60Hzの交流ではなく、直流送電であれば、それらの新材料が使われることはありうるが(参考資料2)、市場が小さいため期待はできない。

ソーラー発電はパワーMOSFETが活躍

ソーラー発電あるいは太陽電池は、光が当たっている間だけ電流が流れるフォトダイオードであることを連載1回目で述べた。そして、ここで発電された電気は、100Vの商用電源に変換しなければならない。ここでもインバーターの登場となる。インバーターに使われるパワートランジスタは、パワーMOSFET(MOS構造のトランジスタ)やIGBTなどの損失が少なく安価なデバイスとなる。

ソーラー発電では、電力を増やすために、ソーラーパネルをそのまま直列につなげて構成することが多い(図4)。直列につなげると、電流容量を増やさずに出力電圧は高くなるため、配線を太くする必要がないというメリットがある。反面、一部のパネルが日陰に入ったり、落ち葉が被さったりして発電量が落ちると、ほかのパネルに流れる電流も低下して、トータルの発電力が落ちてしまう。

[図4] ソーラー発電は直列接続することが基本
作成:津田建二
ソーラー発電は直列接続することが基本

とはいえ、電力システムでは、電流をあまり大きくせずに電圧を上げることが多い。電流の容量を増すためには電線を太くしなければならないからだ。太くすると当然重くなるため、例えば送電網のような用途では太い電線は許されない。

大容量のソーラー発電では、ソーラーパネルの電圧(数十V)をさらに昇圧した後、インバーター回路で商用の交流100V電源に変換する。この場合のインバーターにはIGBTあるいはパワーMOSトランジスタを使うことが多い。ソーラー発電は家庭やオフィス用の電源として使われるのが一般的で、発電能力が風力ほど高くはないためだ。そのため、ソーラー発電ではコストを優先して安いパワーMOSトランジスタを使うことが多く、家庭用の数kW程度ならそれで十分である。例えば東芝のウェブサイトによれば、家庭用ソーラー発電には最大450Vと定めたパネルが多いため、パワートランジスタの耐圧は1000Vも必要ない。電流は10A程度のようだ。しかし、メガソーラーのファームのように大規模ソーラーになると、富士電機の例では、電圧は1200Vと大きく、電流も100~300A程度の規模が多いようだ。

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