No.024 特集:テクノロジーは、これからのハピネスをどう実現できるのか

No.024

特集:テクノロジーは、これからのハピネスをどう実現できるのか

連載01

“非密”のテクノロジーを活かせ

Series Report

コロナ禍を機に、密着作業を根本的に見直し

コロナ禍を契機に、取引先やパートナー企業と、直接対面することなくビジネスを進めることができる体制の構築を模索する企業は、あらゆる業界で増えてきた。そして、関係者が実際に顔を合わせて作業せず、テクノロジーの力を借りて、作業のリモートや自動化をしてみると、「意外と行けるではないか」とか「むしろ、これまでよりも効率的なのでは」といった声が聞かれるようになった。コロナ禍は、人手に頼っていた作業のシステム化の有効性に気付く良い機会になっている面があるのだ。

例えば、これまで高難度の専門知識が求められるITシステムを円滑に導入・運用するためには、システムの導入先の企業にITベンダーのエンジニアが常駐することがよくあった。ITシステムは、導入先の企業の業務にカスタマイズして構築・運用する必要があるからだ。そして当然のように、ユーザー企業とITベンダーの担当者の間で密接度の高いやり取りが行われていた(図2)。

[図2]企業がITシステムを導入・運用する際、ベンダーのエンジニアが常駐するのが当たり前だった
画像:Adobe Stock
企業がITシステムを導入・運用する際、ベンダーのエンジニアが常駐するのが当たり前だった

ところが、コロナ禍での三密を回避する動きに沿って、常駐型のITシステムの開発・運用を、ユーザー企業側からの申し出によって取りやめるITベンダーが増えてきた。元々、ITシステムの多くは、太いネットワークで外部とつながっている。このため、ITベンダーのエンジニアがリモート作業できる場合が多い。これまでは、作業効率を高めるため、さらにはユーザーの満足度を高めるためにベンダーのエンジニアがユーザー企業に常駐していた。しかし、ユーザー側にリモート作業を望み、協力する体制を作ることができれば、関係者で資料を共有しやすい、隙間時間に打ち合わせしやすいなど、常駐型よりもよほど生産性が高まる可能性があるのだ。

加えて、大企業などでは外部からの常駐エンジニアを受け入れるためのオフィススペースを確保している場合も多く、リモート作業が中心になれば大幅なコスト削減も可能だ。既に、こうした意図からオフィススペースを縮小する動きが出てきている。これは、コロナ禍が去っても後戻りすることを考えていない動きであり、ITシステムの導入・運用のリモート化は定着していくことだろう。

オンライン会議システムを活用して産業機器を導入・運用

ネットワークに接続していることが当たり前のITならば、リモートからの導入・運用作業はしやすい。しかし、冒頭に挙げたような製造装置に類する工作機械、プラント、橋や道路など社会インフラなどではどうだろうか。これらの装置や設備では、安全・安定した稼働と運用に向けて定期的な点検や補修が必要であり、その際には利用者とメーカー双方のエンジニアが密接に協力して作業していた。

ところが、工作機械メーカーなどの中に、リモートでの装置立ち上げを試みるところが出てきた。例えば、大手工作機械メーカーであるDMG森精機では、オンライン会議システムを利用した「リモート立ち会い」と呼ぶサービスを開始した。工作機械は、出荷する前に機械の外観や加工精度、加工物、システム動作などを、メーカーの工場でユーザーが確認するのが常だった。同社では、オンライン会議システムを活用して自社工場とユーザー企業をつなぎ、出荷前の工作機械やシステムに取り付けた複数のカメラ映像をリアルタイムで確認することで、リモート立ち会いを実現した。同社は、リモート立ち会いでも十分な確認ができることが分かり、加えてユーザー企業から、これまでよりも多くの関係者が参加できるメリットがあることに気付いたことから、コロナ禍後も、このサービスを継続していく予定だとしている。

また、OKIエンジニアリングは、「オンライン立会解析」と呼ぶサービスを始めた(図3)。故障した産業用電子機器の故障原因を、オンラインを通じて、ユーザー企業の担当者と協力しながら解析するサービスである。産業用電子機器は、利用現場の環境や使用方法を反映して不具合や故障を起こすことが多い。このため、電子機器の専門家が故障した機器を引き取って解析するよりも、現場で機器を使用していた人と共同で解析した方が、疑問点を速やかに解消できるため正確な解析結果を迅速に得やすい。ところが、コロナ禍によって、こうした共同解析ができなくなっていた。そこで同社は、オンライン会議システムを通じて、解析作業の様子や特殊な測定器のデータなどを共有しながら共同解析できる体制を整えた。同社もまた、実際にオンラインでの共同解析を進めてみると思いのほか効率がよいことから、今後は解析対象を拡大していくようだ。

OKIエンジニアリングの「オンライン立会解析」
OKIエンジニアリングの「オンライン立会解析」

[図3]OKIエンジニアリングの「オンライン立会解析」
出典:OKIエンジニアリング

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