No.024 特集:テクノロジーは、これからのハピネスをどう実現できるのか

No.024

特集:テクノロジーは、これからのハピネスをどう実現できるのか

連載01

“非密”のテクノロジーを活かせ

Series Report

緊急対応と定期保守の頻度を減らす遠隔監視と予兆保全

近年、産業用の装置や設備に、状態をリアルタイムで検知するためのセンサーを取り付け、遠隔地から常時監視するIoT(Internet of Things)システムの導入が進んできた。こうしたシステムは、点検や保守の作業の効率化や人材不足の解消に向けた手段として、その活用に注目が集まっていた。これが、コロナ禍での密接状態を回避する手段としても注目されるようになってきた。コロナ禍は、こうしたIoTシステムの導入を加速する要因になりつつある。

製造業の現場などでは、いざ工場の装置が故障するような事態になれば、現場担当者や生産技術のエンジニア、装置メーカーのエンジニアなどが至急集まり、密接状態の中で対処しなければならない。突発的な故障を避けるためには、定期的な点検や部品交換などの保守が極めて重要だ。しかし、これまで装置や設備の保守では、定期点検や部品交換に際して、これまたメーカーのエンジニアとユーザーが現場に集まっていた。いずれにしても、密接状態を生む。

これが、IoTシステムを使って遠隔監視できるようになれば、関係者が集まる必要がなくなり、密接状態を防ぐことができる。また、IoTシステムでは、現場の装置や設備に取り付けたセンサーから収集したデータを蓄積し、AIなど情報解析技術を活用して、そこから不具合や故障に至る兆候をあぶり出し、実際に故障する前に対処することが可能だ。こうした保守の方法は「予兆保全」と呼ばれている。予兆保全を実施すれば、故障するギリギリのところまで利用し続けることができるため、一定期間利用した部品を見切りで交換しなくても済むようになる。その結果、関係者が集まって行う保守作業の頻度を減らすことができるし、コストダウンにもつながる。

不特定多数の人が扱うモノを触れることなく操作・利用可能に

新型コロナウイルス対策での密接回避の難しいところは、人と人が直接触れ合うような場面を回避したとしても、それだけでは十分ではない点だ。ウイルスに感染した人が触れたり、飛沫が付着したモノを介したりして、感染が拡大する可能性がある。これを防ぐには不特定多数の人が利用するモノには、なるべく触れないことが重要になってくる。そうはいっても現状では、道具を使ったり、機器を操作したりする際には、モノに全く触れないというわけにもいかない。こうした課題をテクノロジーの活用で解決しようとする動きが活発化している。

[図4]顔認識を活用したセキュリティ・システムの活用が拡大
出典:NEC(左)、美和ロック(右)
顔認識を活用したセキュリティ・システムの活用が拡大 顔認識を活用したセキュリティ・システムの活用が拡大

美和ロックは、顔認証技術によって手でドアに一切触れることなく、解錠しドアを開けることができるハンズフリーのセキュリティ・システム「All Touch-less」を開発した(図4)。マンションやアパートなど、入居者だけでなく、配送業者など不特定多数の人が出入りする場所での利用を想定したものだ。

コロナ禍以降、マスクをしていても高精度での顔認証ができる技術も登場してきている。NECは、人の目の周りから特徴点を抽出し、元データと照合して本人確認を行う顔認証技術を開発した(図4)。これまでの顔認証技術では、目・鼻・口から特徴点を抽出していたが、今回、開発した技術では目に重点を置いて判断するように改善した。社内の評価では、1対1認証(個人の生体情報を呼び出した上で、本人と比較する方式)での認証率が99.9%以上だったとのこと。ちなみに、マスクに色や柄があっても問題ないという。

また、アルプスアルパインやイギリスのUltraleap社など多くの企業が、タッチパネルや物理的なボタンに代わる、電子機器の操作に向けたタッチレスのユーザー・インタフェース技術の開発に取り組み、コロナ対策の電子機器操作の手法として提案している(図5)。これらはエレベータや自動販売機などのボタンの代替、デジタルサイネージや車載機器の操作への応用を想定している。

[図5]機器に触れることなく操作可能に
出典:アルプスアルパイン(上)、Ultraleap社(下)
機器に触れることなく操作可能に
機器に触れることなく操作可能に

例えば、アルプスアルパインの技術では、操作パネルから100mmの位置に手や指が近づくと、コントロール画面が立ち上がり、さらに近づけるとアイコンが強調表示され、そのまま指を動かさなければアイコン選択、そして決定操作となる。また、画面の前で手を左右に振るスワイプ動作も可能だ。

一方、Ultraleap社の「Leap Motion Controller」と呼ぶ技術では、両手の10本の指を同時検出し、押し込むタップ動作だけではなく、指を広げるピンチ操作、さらにはじゃんけんの「グー」「チョキ」「パー」のような複雑なジェスチャーも認識可能である。同社は、非接触の手に触感を与えるハプティクス(触覚フィードバック)技術も保有しており、操作感を感じながら機器を扱うことも可能だ。

TELESCOPE Magazineから最新情報をお届けします。TwitterTWITTERFacebookFACEBOOK