No.024 特集:テクノロジーは、これからのハピネスをどう実現できるのか

No.024

特集:テクノロジーは、これからのハピネスをどう実現できるのか

連載02

ニューノーマル時代にチャンスとなるテクノロジー

Series Report

オンライン会議にアバターとして参加

テレワークでの会議を、ZoomやWebEx、Teams、ON 24などのビジネスライクなツールではなく、アバターを使ってより現実的に一緒にいるかのように見せかけるツールを作成している企業がある。スウェーデンの南、グーテンバーグに拠点を置く、スタートアップのMixtive(ミクスタイブ)社は、AR(拡張現実)を利用して、一つの会議室や場所で仲間と一緒にいるような臨場感のあるソーシャルネットワークツールAR Callを開発している。

ZoomやWebEx、Teams、ON 24などのオンライン会議ツールは、新型コロナ時代を迎え、急激に普及している。しかし、あくまでもビジネスツールという視点でのパワーポイント画面の共有など「会議」が主目的で、遊び心はない。

それに対し、AR Call(図6)は、例えばオンライン会議の様子を描き、自分のアバターと他の参加者が全員集まっている様子を表現する。いわゆる臨場感を出すことで実際に会っているような体験を作り出しているのだ。これまでもVRツールで完全グラフィックスのアバターを表現し、OculusなどのVRハードウエア機器で見るようなものはあった。しかし、会議相手の映像と自分のアバターを同じ会議場で表現して見せるツールはなかった。

[図6]AR Callでは自分はアバターとして仲間と一緒にいるような臨場感がある
出典:Mixtive社
AR Callでは自分はアバターとして仲間と一緒にいるような臨場感がある

AR CallのARツールは、スマートフォンで見るか、サングラスのような眼鏡「ARglass」をかけることになるが、VRのゴーグルと違って身体的な負担は少ない。ARglassをかけると、ホログラムとして会議の仲間が現れて、アバターの自分と一緒に会議の場やフロアにいるかのように見えるようになる。同社は、開発中の新しいバージョンのARglassを韓国のLGに供給する計画である。

[図7]AR Calls社創業者兼CEOのMagnus Willner氏
AR Calls社創業者兼CEOのMagnus Willner氏

同社は、AR Callを、これまでのビデオによるオンライン会議に代わる次世代のコミュニケーションツールと位置付けている。同社の創業者兼CEOのMagnus Willner氏(図7)も、今のところ独自のソーシャルネットワークツールだが、将来はZoomやWebEx、Teamsとも統合できればうれしい、と述べており、今後のさらなる普及に期待を寄せているようだ。

以上、人と触れない、距離を十分に取る、といった新型コロナの対策をIT技術の視点から述べてきたが、新型コロナとは当分つきあわなければならないため、こういったテクノロジーは今後の更なる進展が期待される。

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニストとしても活躍。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。著書に「メガトレンド 半導体2014-2024」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)などがある。

http://newsandchips.com/

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