No.018 特集:スマートコミュニティと支える技術

No.018

特集:スマートコミュニティと支える技術

連載01

半導体チップの再生可能エネルギーへの応用

Series Report

今後の成長市場は小型エネルギーか

再生可能エネルギーのソーラーパネルは家庭用に設置されるだけでなく、業者がメガソーラー用に設置する場合もある。フィードインタリフ(FIT)制度はソーラーパネルの普及には役立ったが、そのための補助金を一般ユーザーの電力料金に上乗せしているため、反対意見も根強い。また世界的には、FIT制度を取りやめても、ビジネスとして自立できるほどソーラーパネルの料金は安くなっている。実際に、太陽光発電のコストは2010年から2017年までに73%も下がり(参考資料3)、2017年には発電原価は20セント/kWhになった。化石燃料の原価は7~17セント/kWhと言われており、このままいけば2020年には化石燃料の原価を下回るとさえ言われている。また、その他の再生可能エネルギーの発電原価は、風力発電は6セント/kWh、水力発電は5セント/kWhだという。

ただし、大規模な水力発電にはダムが必要で、そのために森林を削り、池を掘り、住民移転を強制するなど問題が多く、環境的には好ましくないとさえ思われている。そこで、既存の川に小型発電機を設置し、そのエネルギーを利用しようという試みも出てきている。

風力発電は、巨大なタービンを回すと騒音が大きい。そのため、多くは人家から離れた低い山の稜線に設置されており、さらに海上への設置も進められている。ただし、海上での発電には余計なコストがかかるので、発電原価は15~16セント/kWhと高くなる。

また、水力発電で小型発電機が導入されたように、風力発電でも小型で騒音の少ないタービンが都市のビルなどで使われ始めている。小型の発電機が水力、風力で普及するようになれば、インバータ市場は拡大し、内蔵される半導体も増えることになる。再生可能エネルギー分野における半導体市場は、今後も拡大していく可能性が高そうだ。

次回の連載第2回は、再生可能エネルギーシステムに使われる半導体そのものを紹介し、連載第3回では、今後の期待がかかるスマートシティと電力のスマート制御について議論していく。

[ 参考資料 ]

1.
東京電力、「電力会社における周波数調整と会社間連系について」(2013/09/12)
http://www.re-policy.jp/keito/2/030912_09.pdf
2.
Enphase Energy Announces Seventh-Generation Microinverters for Australia and New Zealand、同社プレスリリース(2018/06/25)
http://newsroom.enphase.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=1070803
3.
IRENA編「2017年再生可能エネルギー発電費用」
IRENA_2017_Power_Costs_Summary_2018_JP_29052018.pdf

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

http://newsandchips.com/

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