No.018 特集:スマートコミュニティと支える技術

No.018

特集:スマートコミュニティと支える技術

連載02

本格的EV時代が目前、EVをもっと楽しくする技術

Series Report

機電一体で、小型・軽量化と高効率のレベルを底上げ

クルマの開発において、部品の小型・軽量化は常に正義である。部品を小型化すれば、車内空間や荷物の積載空間を拡大できる。また、軽量化することで、加速やカーブ時の機敏さなど運動性能が高まり、電費(EVの燃費)の削減や航続距離の延長が実現する。このため、モーターや駆動系の機構においても、あの手この手で小型・軽量化を目指す新技術が提案されている。

まず注目できる技術トレンドとして、モーターと周辺部品を1つのモジュールにまとめる“機電一体”と呼ばれる動きがある(図4)。電気的要素と機械的要素を併せ持つモーターに、純粋な機械部品である減速機を組み込んだもの。さらには、モーターを駆動制御する電気回路であるインバータまでモーターに組み込んだものなどが試作されている。

[図4] モーターと周辺部品を1つのモジュールにまとめる“機電一体”
出典:日本電産のリリース
モーターと周辺部品を1つのモジュールにまとめる“機電一体

いずれも、駆動系機構の小型・軽量化、高効率化、低コスト化が狙いである。モーターと減速機が一体化することで、減速機の歯車の潤滑油をモーターの冷却油として転用できるため、冷却機構がシンプルになる。さらにインバータを組み込むことができれば、モーターとの間をつなぐワイヤーハーネスを短縮できるため、小型・軽量化と損失軽減が同時に実現する。さらに、電気的な接点が減るため信頼性が高まり、組み立て時の作業工程も減る。まさにいいことづくめである。

インホイール・モーターという新たなクルマの姿

さらに、モーターを含む駆動系機構を、タイヤのすぐ側、ホイール内に収めてしまうための技術開発も進んでいる。“インホイール・モーター”と呼ばれる技術である(図6)。これは、エンジン車で実現することが極めて困難な、EVならではのクルマの構造である。

[図5] インホイール・モーターの開発例
出典:NTNのリリース
インホイール・モーターの開発例

インホイール・モーターが実現すれば、モーターで生み出した力をタイヤまで伝達するための大掛かりで重い機構がいらなくなる。このため、駆動効率と運動性能の向上、車内空間の拡大が期待できる。さらに、4輪それぞれの駆動力をきめ細かく制御できるため、車両の横滑りや車輪の空転などの防止が可能になり、安全性が高まる。そして、コーナーを曲がるときに生じるロールや、急加速や急停止の際に車体が前後に揺れるピッチングを制御できるため、快適性も高まる。4輪駆動車も作りやすい。

いかにも魅力的な特長ばかりだが、2025年くらいには実用化する可能性が高いと言われている。本格的なEV時代には、インホイール・モーターが当たり前になる可能性もありそうだ。

連載第1回の今回は、EVを魅力的で価値あるものにするための技術を、モーターを中心に解説してきた。第2回では、そのモーターを駆動制御するための電気回路の技術開発の動きを、インバータを中心に解説する。

Writer

伊藤 元昭(いとう もとあき)

株式会社エンライト 代表

富士通の技術者として3年間の半導体開発、日経マイクロデバイスや日経エレクトロニクス、日経BP半導体リサーチなどの記者・デスク・編集長として12年間のジャーナリスト活動、日経BP社と三菱商事の合弁シンクタンクであるテクノアソシエーツのコンサルタントとして6年間のメーカー事業支援活動、日経BP社 技術情報グループの広告部門の広告プロデューサとして4年間のマーケティング支援活動を経験。

2014年に独立して株式会社エンライトを設立した。同社では、技術の価値を、狙った相手に、的確に伝えるための方法を考え、実践する技術マーケティングに特化した支援サービスを、技術系企業を中心に提供している。

URL: http://www.enlight-inc.co.jp/

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