No.019 特集:医療ビッグデータが変える医学の常識

No.019

特集:医療ビッグデータが変える医学の常識

連載01

ヘルスケア/メディカルに半導体チップが生きる。

Series Report

ウェアラブル機器設計プラットフォーム

ウェアラブル機器をより簡単に設計するための、ハードウエアデザインプラットフォームをマキシム(Maxim)社が発表した。同社では、ECG、心拍数、体温モニターを備えた腕時計型の開発プラットフォームを実現している(図2)。

[図2] Health Sensor Platform 2.0
心電図と心拍数、体温を測定するヘルスケア機器開発プラットフォーム
出典:Maxim Integrated
体温を測定するヘルスケア機器開発ツール

開発したマキシム社のインダストリアル&ヘルスケア製品事業部ディレクターによれば、この開発プラットフォーム「Health Sensor Platform 2.0」は、学生レベルからエンジニアレベルまで使えるツールだという。ウェアラブル機器のサンプルとして、図2のような時計型のデバイスを示し、小型のデバイスを作れることを訴求した。ただし、マキシム社はデバイスを作るわけではなく、あくまでも半導体チップを提供するのみだ。

この腕時計型開発ボードに搭載されているマキシム社の製品には、以下のようなものがある。PPG(光電脈)アナログフロントエンドセンサ、バイオポテンシャルAFE、体温センサ、マイクロコントローラ、電源用PMIC、6軸加速度計・ジャイロセンサ、さらに、組み込み心拍アルゴリズムを備えたバイオ計測センサハブ。このうち6軸センサは、市販の部品である。同社では、プラットフォーム化することで、ウェアラブル型ヘルスケア機器の開発期間の短縮につながり、最大6か月縮まるとしている。

テラヘルツで心拍データ取得

変わったところでは、イスラエルのNeteera社が140GHzのレーダーを使った40nmプロセスのCMOSLSI(図3)による、健康状態モニターを提案している。サブテラヘルツの140GHzという高周波となると、波長は1mmよりも短く、約0.2mmになる。アンテナの長さは波長に比例するため、0.2mmとなるとLSIチップの上にアンテナ素子を置くことができ、まさに送受信可能な1チップレーダーとなっている。パッケージの上には反射波を受信するためのマイクロレンズが5個取り付けられる。

[図3] ICチップの表面にアンテナを置き、電波を発射する。その反射波をパッケージの表面に設けたマイクロレンズで受ける
出典:Neteera
ICチップの表面にアンテナを置き、電波を発射する。その反射波をパッケージの表面に設けたマイクロレンズで受ける

このチップは、心臓と肺の動きを捉え、モニターするものだ。アメリカのFDA(食品医薬品局)公認の心電図と、このチップで捉えられた心拍パルスの時間変化はよく一致している(図4)。

Neteera社は、イスラエルのモービルアイ(Mobileye)社の経営陣たちが2015年に設立したベンチャーで、この健康状態モニターをクルマのドライバーに適用する用途をまず狙っている。実際、2018年10月にフランスのパリで開催されたモータショーでは、この健康モニターが某サプライヤーに採用された。

[図4] 140GHzのサブテラヘルツを使った心拍図
赤い線で描かれた心電図の鼓動(パルス)と青い線で描かれたNeteera社の技術による鼓動は一致したピーク値を持つ。
出典:Neteera
ICチップの表面にアンテナを置き、電波を発射する。その反射波をパッケージの表面に設けたマイクロレンズで受ける
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