No.019 特集:医療ビッグデータが変える医学の常識

No.019

特集:医療ビッグデータが変える医学の常識

連載01

ヘルスケア/メディカルに半導体チップが生きる。

Series Report

TIはECGとPPGを同時測定

アナログ・デバイセズ社と同様なセンサからの信号を処理するアナログフロントエンド回路を公開しているテキサス・インスツルメンツ社(Texas Instruments)は、図4のような回路モジュールを提案している。これは、図2のような心電図(青線)とPPG(赤線)の両方を測定する回路を想定したものだ。さらに、AFEにデジタルのマイコン(MCU)を含めるだけではなく、データを2.4GHzのBluetoothなどで外部へ送信するRF回路も集積したICとなっている。

[図4] PPGとECGの両方を測定する回路の例
出典:Texas Instruments
PPGとECGの両方を測定する回路の例

この回路は、アナログ・デバイセズ社のとは違い、アナログフロントエンド(AFE)部分には、PPGとECGの両方の脈拍データを見るために同期を取る回路も集積されている。また、PPGではLEDを駆動するための回路が必要であり、LEDを駆動する回路もAFEに内蔵されている。

この回路モジュールは、コイン電池1個でウェアラブルデバイスを駆動する。そのため、AFE内のLEDを駆動するための昇圧型DC-DCコンバータと、降圧・昇圧(Buck-Boost)のDC-DCコンバータ*5を搭載している。降圧・昇圧コンバータが必要なのは、以下のような理由だ。電池が3Vの場合、フォトダイオード*6を駆動する電圧である2.1Vまで、降圧コンバータを使って下げる必要がある。しかし、電池は使っているうちに電圧が下がっていくため、電圧が2.1V以下に下がった場合は、2.1Vまで昇圧しなければならないのだ。だから降圧・昇圧コンバータが必要なのである。

今後はウェアラブルからヘルスケア、医療へ

ウェアラブルのヘルスケアデバイスは、これまで見てきたように新しい心拍数を計算する測定技術を採用してきた。この光を利用するPPG測定方法は、これまでの心電図(ECG)とは違って電池動作が可能であるだけではなく、その曲線はECGと同様に安定している。このため、医療機器にも応用できる可能性が出てきたのだ。また、脈波を使った血圧測定の可能性も研究されており、高価なCTスキャナやMRIのような医療機器に代替できるかもしれない、微量な磁力を測定する新技術も登場してきた。

連載第3回では、ウェアラブルから医療機器への応用が可能になりそうな技術、さらにITや半導体テクノロジーを使うことによって、盲目の方たちが不自由なく街を歩いたり、買い物したりできるような、これまでになかったテクノロジーやサービスも紹介する。

[ 脚注 ]

*5
DC-DCコンバータ:
直流電圧(DC)から別の直流電圧(DC)に変換することのできるICで、電圧一定の安定化電源を構成する。
*6
フォトダイオード:
光を電気に変換する半導体で、受光ダイオードともいう。

[ 参考資料 ]

1.
IDC Forecasts Slower Growth for Wearables in 2018 Before Ramping Up Again Through 2022(2018/09/13)
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS44276818

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニストとしても活躍。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。著書に「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)などがある。

http://newsandchips.com/

ナノテクミュージアムから最新情報をお届けします。FacebookFACEBOOK
MAIL MAGAZINE