No.019 特集:医療ビッグデータが変える医学の常識

No.019

特集:医療ビッグデータが変える医学の常識

連載01

ヘルスケア/メディカルに半導体チップが生きる。

Series Report

全盲者の支援も可能に

ウェアラブルデバイスによる、全盲者の支援も行われている。全盲者が自由に一人で、買い物をしたり、散歩をしたり、会話をしたり(図4)といった、健常者と同じような行動ができるようアシストする。

[図4] カメラ付きのスマートグラスを付け、ガイドの声を聞くことで健常者並みの行動が可能になる
出典:Airaおよび参考資料4
カメラ付きのスマートグラスを付け、ガイドの声を聞くことで健常者並みの行動が可能になる

このウェアラブルサービスを使うと、次のようなガイドを受けることができる。「あと2歩進むと左側にドアがあります」。このように全盲者でも声によるガイドがあれば健常者のように街を歩くことができる。ガイドの声の主は、ウェアラブルサービス「エイラ(Aira)」の研修を受けたエージェント(代理人)だ。遠隔地のデスクに座っているが、全盲者の眼鏡に装着された小型カメラを通して全盲者の前の景色を見ているため、的確なガイドが可能だ。このエイラサービスは、全盲者だけではなく視力の弱い方も対象としている。

ただ、このサービスは人間が案内するためコストが高く、ひと月に数万円もかかる。しかし、例えば前方の障害物を回避するといった単純な案内の場合はコンピュータで行い、複雑な案内の場合のみ人間が行うようにすればコスト的には安くできるとしている。

将来の医療

将来のウェアラブルデバイスには、ディープラーニングや機械学習などのAIが搭載され、データをその場で解析できるようになるだろう。さらに、血糖値や血圧の連続測定ができ、スマート絆創膏、スマートピル、リモートでの患者モニタリングなどが当たり前になる日が間もなくやってくるに違いない。

その兆候はすでに現れている。2018年9月にAppleWatchのシリーズ4が備える心電図機能がFDAに認可されたのだ(参考資料6)。すでに2017年9月にFDAはスマホで利用されるアプリを認可している。これまでは薬が患者の疾患を直す手段であったが、医師とのチャットボットのようなアプリで患者の健康を回復できるのなら、これも「薬」として認めよう、ということになったと慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室の宮田裕章教授は説明する。AppleWatchというハードウエアもアプリのように患者の健康に寄与する「薬」という位置づけになることをFDAは認めたといえそうだ。

[ 参考資料 ]

1.
The State of Wearable Technology in Healthcare: Current and Future(2018年10月4日)
https://www.wearable-technologies.com/2018/10/the-state-of-wearable-technology-in-healthcare-current-and-future/
2.
The Future of Medical Wearables(2017年6月6日)
https://www.mpo-mag.com/issues/2017-06-01/view_columns/the-future-of-medical-wearables
3.
The Role of Wearable Technology in Healthcare Interoperability(2018年10月23日)
https://thejournalofmhealth.com/the-role-of-wearable-technology-in-healthcare-interoperability/
4.
7 Wearables That Go Beyond Fitness Trackers and Smart Watches
https://endpoints.elysiumhealth.com/next-generation-wearables-2018-b0c8be461151
5.
山田一郎、「ヘルスケアモニタリングを目指す生体情報センシング技術」、電子情報通信学会 基礎・環境ソサエティ Fundamentals Review Vol.12, No. 1, pp.30-37, 2018年7月
https://www.jstage.jst.go.jp/article/essfr/12/1/12_30/_pdf/-char/ja
6.
What the AppleWatch’s FDA clearance actually means, The Verge, 2018年9月13日
https://www.theverge.com/2018/9/13/17855006/apple-watch-series-4-ekg-fda-approved-vs-cleared-meaning-safe

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニストとしても活躍。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。著書に「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)などがある。

http://newsandchips.com/

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