Visiting Laboratories研究室紹介
後編:東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 西本啓介さん、屋代貴彦さん

TM ── 杉山研究室を選んだ理由を教えてください。
西本 ── 研究内容に惹かれたというのがいちばんの理由です。研究室を選ぶ時期になると、各研究室の先生方から研究内容の紹介を受けるのですが、その中でいちばんわくわくして、研究してみたいと感じたのがこの研究室でした。また、杉山研究室は「研究をしっかりやる」ということを第一に掲げている点も魅力的でした。他の研究室より大変なところはありますが、将来企業に就職することを考えると、大きな糧になると感じています。
屋代 ── 東京理科大学の電気科には「特別講義」という授業があり、3年生のときに研究室に仮配属という形で入って、研究内容を体験できる機会があります。そのとき私は杉山研究室を選び、いくつか実験に関わらせていただいた結果、太陽電池がすごくおもしろいと感じました。その経験から、4年生になって本格的に研究室を選ぶ際にも、杉山研究室を選択しました。
TM ── いまはどのような研究に取り組んでいますか。
西本 ── 私は透明な太陽電池の研究です。一般的に、酸素と結合している半導体が透明な性質をもつので、酸化ニッケル(NiO)や酸化亜鉛(ZnO)といった種類の素材を使った半導体を研究しています。
屋代 ── 私は「CIGS太陽電池」と呼ばれる、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)の4つの元素を主原料とする軽量な太陽電池を研究しています。他の材料を用いた太陽電池と同程度の発電効率のものを、ものすごく薄く軽く作ることができるので、コストパフォーマンスは高くできます。
TM ── 杉山研究室でどのようなことを得ましたか。
西本 ── 4年生のうちからひとりで実験をやったり、装置が壊れたら自分で直したりといったことをやるので、技術力が身に付きました。また、実験で得たデータについて、これはどういう意味なのかということを自分で考えることもやるので、研究というものに対する総合的な力がついたと思います。
屋代 ── 4年生の秋に学会に参加させていただく機会があったのですが、3年生までの勉強ばかりの毎日とはうってかわって、また4年生という早い時期に、学会の世界に飛び込むことができたのが貴重な経験でした。
TM ── 杉山先生ならではの学びはありましたか。
西本 ── 杉山先生が重要としていることのひとつに、研究成果をいかにわかりやすく人に伝えるか、ということがあります。プレゼンの内容やデータの見せ方など、とても丁寧に指導してもらえます。
屋代 ── 私も同じです。発表の資料の作り方、話し方など、細かい部分まで指導してもらえるところがありがたいです。こうした能力は社会に出てからも役に立つと思いますし、教えてもらっていることが確実に自分の身についていると感じています。
TM ── 今後についてはどのように考えていますか。
西本 ── 研究の面では、透明な太陽電池についてもっと詳しく掘り下げていきたいです。また、今後修士に進学する予定ですが、その先の就活などに向けて、プレゼン能力などをもっと磨いていきたいと思っています。
屋代 ── 現在、宇宙向けの太陽電池としては、 シリコン系やガリウム砒素系の太陽電池が主流となっています。CIGS太陽電池は放射線に強い特性をもっていますので、その技術をさらに伸ばして、宇宙用に使われるようになり、そしてその分野で主流になることを目指しています。
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第1部:
東京理科大学 理工学部
電気電子情報工学科
杉山研究室
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第2部:
東京理科大学 基礎工学部
材料工学科
安盛・勝又研究室
Profile
杉山 睦(すぎやま むつみ)
東京理科大学 教授
1974年生まれ。1998年3月東京理科大学理工学部電気工学科卒、2000年3月東京理科大学理工学研究科電気工学専攻修了、2004年3月筑波大学工学研究科物質工学専攻修了。博士(工学)。東京理科大学理工学部電気電子情報工学科助手、講師、准教授を経て、2018年4月より現職。同大学総合研究院 スペース・コロニー研究センターの他、太陽光発電技術研究部門、先進農業エネルギー理工学研究部門を併任。
安心・安全・安価な次世代太陽電池の研究開発として、「ホームセンターの材料で作れる超安価な太陽電池」「温泉で作る太陽電池」「見えない太陽電池」「透明度が変わる太陽電池」など、今までに無い価値を持った半導体デバイスを開発。また、農業×半導体、福祉×半導体など、日本が抱える問題を解決するデバイスを提案。専門は化合物半導体物性・半導体光デバイス。
西本 啓介(にしもと けいすけ)さん
東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科4年
2020年3月 東京理科大学理工学部 電気電子情報工学科 卒業予定。
屋代 貴彦(やしろ たかひこ)さん
東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科4年
2020年3月 東京理科大学理工学部 電気電子情報工学科 卒業予定。
Writer
鳥嶋 真也(とりしま しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。
国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。主な著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、論文誌などでも記事を執筆。
Webサイト http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info