No.022 特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた:我々はどこから来て、どこへ向かうのか

No.022

特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた。我々はどこから来て、どこへ向かうのか。

Cross Talkクロストーク

宇宙人はいる!?

本間希樹教授

永田 ── 宇宙人!? すごいですね……。ちなみに本間先生は、宇宙人(地球外知的生命体)はいると思いますか?

本間 ── いると思っています。そう思うほうが楽しいですし、いつか地球と似たような惑星でそのような存在が見つかる可能性はあると思います。

ちょうど、2019年のノーベル賞物理学賞の受賞テーマのひとつが、太陽系外にある惑星の発見についてでした。この発見がもたらされたのは1995年、私が大学生のときで、それまでは太陽系が唯一知られている惑星系だったので、ほかの星にも惑星があることがわかり、とても驚きました。今では4000個ほどの系外惑星が見つかっています。地球と似た系外惑星はまだ見つかっていませんが、いつか“第二の地球"のような系外惑星が見つかる日が来るでしょう。

そもそも、この宇宙には無数の恒星があって、そこにいくつもの惑星が回っているのですから、地球だけ特別な天体だと考えるほうが難しいのです。

永田 ── もし宇宙人と会えたらどうしたいですか?

本間 ── 宇宙のことを教えてほしいですね。はるばる宇宙を旅して地球にやってくる宇宙人がもしいたら、私たちよりはるかに科学・技術は進んでいるはずですから、宇宙についても、きっとより多くのことを知っているはずでしょう。ブラックホールの中だって見ているかもしれません。

永田 ── プラネタリウムの解説をやっていると、よく来場者から「宇宙人がいるとしたら、良い者なのか? 悪い者なのか?」と聞かれます。私は、「わざわざ遠い宇宙からやってくるのだから、きっと良い人たちだと思いますよ。」と答えていますが、本間先生はどう思いますか?

本間 ── どうでしょう、難しい質問ですね……。たとえば、太陽は今から約50億年後に燃え尽きるといわれていて、そうなると地球に生命は住めなくなります。もしそのとき、人類がほかの星に移住しようとしたら、私たちは単に自分たちが生き延びようとしているのだけれども、その星の人にとっては侵略者として映るかも知れません。

でも、もし地球までやってくることができる宇宙人がいたら、おそらく何億年、何十億年もの文明や科学技術の蓄積があるのでしょうから、平和主義者だと思います。逆に言えば、そうでなければ、それだけ長く文明を築くことはできないはずなので。

永田 ── それは私たち人類も同じですよね。環境問題や人口爆発など、解決しなければならないさまざまな問題があって、そして少なくとも50億年後には太陽が燃え尽きるとわかっている以上、一致団結してそうした危機を乗り越える方法を考えるべきであって、人類同士で争っている場合ではないですよね。

本間 ── そうですね。また、それは宇宙人がいるかどうかを考えるにあたって、非常に重要な視点だと思います。もし、地球人が50億年後まで発展できるなら、他の宇宙人もそれくらい発展できると考えられますから、この宇宙に宇宙人はたくさんいるということになります。でも、これから地球人が1000年で滅びるとして、他の宇宙人が、地球人と同じような知性や文明の進化を辿るとするなら、宇宙人もそれくらいしか生きられず、お互いに会えるチャンスも小さくなります。逆に言えば、宇宙人がたくさん見つかれば、地球人も何億、何十億年も生き続けることができ、見つからなければ、地球人の未来も暗い、ということを示しているのかもしれません。

つまり宇宙人がいるか、どれくらいいるか、ということを調べることは、私たち地球人の未来を間接的に占っていることになるのです。

未来への想い ――「みんなが同じ夢を持てるか?」

永田美絵氏

永田 ── まさに私たちが一致団結できるかどうかが重要なんですよね。今回のブラックホールの撮像でも、世界中の天文学者が協力したからこそ、この素晴らしい成果を生み出せたんですよね。また、今から120年前にも、ここ国立天文台水沢キャンパスを含む世界各国が協力して、地球の緯度変化を研究したという歴史もあります。天文学について勉強していると、とにかくこうした国や人種を越えて協力した例が多く、「人類は一致団結できるのか」という問いに対する、楽観的な見通しと言えると思います。本間先生たちはどのようにして一致団結できたのでしょうか?

本間 ── まずリーダーは大事ですね。EHTでは米国に、プロジェクト全体をまとめるリーダーがいました。彼のリーダーシップがあることで、プロジェクトが成功に導かれたのは事実です。

でも、それ以上に大事なことは、「みんなが同じ夢を持っていた」ことです。「どうにかしてブラックホールを見たい」という願いが、120人の団結を生み、撮像成功というゴールに到達できたのだと思います。どれだけトップが聖人君子だったとしても、みんなが同じ夢を持っていなかったら頓挫したでしょう。EHTのプロジェクトに参加して学んだのは、「チームワークにとって大切なのは、共通の夢を持ち、共通のゴールを目指すこと」ということです。

永田 ── 国や人種に関係なく、あるいは戦争や紛争が起きている中でも、「ひとつのことを解き明かしたい」という想いで集まって協力できるのが素晴らしいですよね。

本間 ── 私たちの相手は宇宙ですからね。宇宙から見たら、地球なんて“点"でしかありません。その点の中で、国境なんかのことで争っていたら、宇宙人から笑われます。広いマインドを持って、平和の下でやっていくことが大切です。そうした、いわば「宇宙からの視点」を提供するのが私たちの使命だと思っています。

永田 ── 今年(2019年)は、子どもたちやプラネタリウム来場者からブラックホールの質問をいただくことが本当に多かったんです。でも、じつはブラックホールのことって、教科書には載っていないんですよね。でも、子どもたちはみんな知っている。それは、それだけ多くの人たちが関心を持って、このニュースを聞いていたということだと思うんです。そこから、本間先生のように、「広い視野をもって、世界中のみんなが協力して、謎や課題を解決していこう」という志が伝わっていると思います。

本間 ── そうした子どもたちが、天文学や他の科学分野の研究者などを志してくれれば、未来はより良い社会になっていくのではないかと思います。

Cross Talk

本間教授に聞く!史上初、ブラックホール撮像成功までの道程

本間教授に聞く!
史上初、ブラックホール撮像成功までの道程

前編 後編

Series Report

連載01

系外惑星、もうひとつの地球を探して

地球外知的生命体は存在するのか?

第1回 第2回 第3回

連載02

ブラックホール研究の先にある、超光速航法とタイムマシンの夢

過去や未来へ旅しよう!タイムマシンは実現できるか?

第1回 第2回 第3回

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