No.022 特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた:我々はどこから来て、どこへ向かうのか

No.022

特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた。我々はどこから来て、どこへ向かうのか。

Visiting Laboratories研究室紹介

木村 真一教授

TM ── そのセンターの4つの柱について、詳しく教えてください。

木村 ── 1つ目は「スペースQOL(クオリティー・オブ・ライフ)・システムデザインチーム」です。バイオセンサーや、メンタル面の診断、AIを用いた自動診断、火災などの事故への対応の方法など、人の活動に関連する事柄を研究しています。

2つ目は「スペースアグリ技術チーム」で、植物の生産に関する技術を研究しています。たとえば東京理科大学には、水中プラズマを使って藻の発生を抑えて植物を育てるというユニークな技術があり、これが宇宙での植物生産に役立てることができないかと考えています。

3つ目は「創・蓄エネルギー技術チーム」です。なにをやるにしてもエネルギーは非常に重要です。じつは、世界初の乾電池を開発したのは東京理科大学の卒業生であったり、また今も太陽電池の研究で高い技術力を有していたりなど、エネルギーに強いという特色があります。

そして4つ目が「水・空気再生技術チーム」です。東京理科大学は、先代の学長である藤嶋昭先生が世界で初めて「光触媒」を発見したこともあり、その研究・開発に非常に力を入れています*1。その技術を宇宙での環境浄化や宇宙でのリサイクルなどのために使おうと考えています。

TM ── スペース・コロニー研究センターの現状や、今後の展望について教えてください。

木村 ── 東京理科大学が持っている、これらの技術は、もともと地上の衣・食・住のために研究・開発していたものですが、センターがノード(接点、分岐点、中継点)となって、これらの技術を宇宙につなげていくことで、スペース・コロニーでの暮らしを実現していこうと考えています。

とはいえ、大学の中だけでは不十分なところもあります。しかし私たちには、国の研究機関や、ベンチャー企業などとの強いつながりがあるため、そのネットワークを活かして、連携して研究・開発していこうとしています。2018年には産学官の連携による研究の場として「スペース・コロニー研究開発コンソーシアム」を設立しました。

前述のように、私たちがやろうとしているのは、あくまでスペース・コロニー実現のための要素技術の研究であり、コロニーそのものを造ることではありません。コロニーを造るのは、予算や政治的な問題などの関係から、とても大学が主導できるものではありません。

ただ、将来的にコロニーが造られるとなったとき、その実現に必要な要素技術を持っていれば、主導権を握ることができます。そして世界的に民間ベンチャーによる宇宙開発が活発な今、スピード感も重要です。スペース・コロニー研究センターやコンソーシアムは、そうした要素技術を、スピード感を持って研究・開発していくということを目指しています。

また、スペース・コロニーの実現を目指すことで、さまざまな研究や技術を高度化させることができます。それはもちろんスペース・コロニーを造ることにも役立ちますが、同時に地上のあらゆる物事の解決、たとえば環境問題やSDGsに代表される地上の諸問題の解決にも役立つと思います。そのことのほうが重要であると考えています。

[ 脚注 ]

*1
東京理科大学の「光触媒」研究については、本号のVistiting Laboratories第2部「夢の人工光合成「光触媒」技術で、宇宙でも地球でも持続可能な社会を実現」でも、詳しく取り上げている。
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